悪銭身につかず


部屋で書類のハンコをぺたぺた押していた王子のところに、珍しくロイとダインが一緒に顔を出した。
「王子さん、青い兄ちゃんがタチの悪い連中につかまってるぜ?」
「え、ベルクートが!?」
「最初は酒場での賭け事を止めようとしていたのですが、逆に無理やり参加させられてしまったようで……」
見かねて、知らせに来てくれたようだ。
ベルクートが「運が悪い」のは有名な話。賭け事なんかしたらどうなることやら。
「大変だ、助けなきゃ!」
領地に攻め込まれた時くらいの勢いで、王子は部屋から飛び出した。

***

配られたカードを手に、ベルクートは途方に暮れた顔をしている。
よほど手札が悪かったのか。
その様子に、王子軍きってのゴロツキ、もといログとハレッシュがニヤニヤした。
リンファも、自分の札を見て口元をかすかに吊り上げる。
「レイズ(掛け金引き上げ)だ」
「オレもレイズ」
「あたしもよ」
「あんちゃん、下りないなら掛け金加えな。ただし、下りるなら今の掛け金は没収だ」
「ええと……それでは、レイズ」
つられたのか、ベルクートも他の者たちと同額をおずおずと差し出した。
周りの雰囲気に呑まれたのか、相場が分からないのか、かなり高額になっている。
場に出た金は結構な額。
よし、いまだ。
三人が目で火花を散らした。
「「「オープン!」」」
机に、カードが並ぶ。
「ストレート(番号が並び)だぜ!」
「残念だったなぁ、ログ。オレはフラッシュ(5枚同じマーク)だ!」
「ふふふ……甘いわね、私はフルハウス(ワンペアとスリーカード)よ!」
「「げげ!!」」
今回は、リンファの圧勝。
中年男性二人が情けない顔で、掛け金をリンファに押し付ける。
「あんちゃんも残念だったな、まぁ、最初は勉強代だと思って掛け金リンファに渡しな。上手くなりゃ、そのうち取り返せるさ」
だから当分カモになってくれ、と言わんばかりのハレッシュ。
掛け金を取り上げようとした、その時。
「私の手札確認、よろしいでしょうか」
控えめに、ベルクートが口を開いた。
「ん? ワンペアか? ブタか?」
開かれたカードは。

――フォーカード

「「「ええええええ!?」」」
もっぱら運が悪いと、軍内でも評判なのに!
なんで、どうして!
と三人が叫んでいるところに、王子が到着した。
三人の驚愕したまま固まっている様子に、状況を察してほっとする。
「ベルクート、良かった」
王子の姿を見たベルクートは、勝ったのにしょぼんとしている。
「師匠に賭け事は厳禁と言われていたのに破ってしまいました。反省を兼ねて……」
今回はなかったことに!?
負け組が目を輝かせる。
「軍の資金に寄付します」
「「「えええええ」」」
再び、失望と落胆の悲鳴。
賭け事仲間の手に渡ったのであれば取り返すこともできるが、寄付ではもう手が出せない、という思いが裏にある。
敗者の末路だ、同情の余地なし。
「とにかく、無事でよかった」
到着までに身ぐるみはがれているのではないかと、本気で思っていたのは内緒である。
「殿下にいただいたこれのおかげかと」
「あ、ラックリング」
前に金運の指輪をもらった礼にと渡した、幸運のおまじないアイテムだ。
気分程度かと思っていたが、意外と効いたのだろうか。
「ああ、それから」
王子に引っ張られて酒場から出る前に、ベルクートは振り返った。
「皆さん、役が出やすいように調整するのは、ほどほどにしておいた方がよろしいかと。……最初の手で、札がそろってましたよ」
追い討ちをかけられた三人が、机に突っ伏した。


おしまい


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普段溜め込んでいるラッキーポイントを使ってみました(ウソ)。
ベルさんは、自分ではどうしようもないことに関して運が悪いけれど、管理、調整できることについては、結構と上手いと思います。

王子は、こんなのにお金使うくらいなら、自分が乗る竜馬に賭けなさい、と説教しているようです。
…それもどうかと。







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