脅威の呼び声 ――凱旋歌(トライアンフル)
トルヴェール四強が飲み会を開いているようです。
キング・ヴォジェック
ヴォルジャガ・ブラッドムーン
ロード・ゼベル
レグネド・セーバーソウル
ヴォルジャガ 「いやー、一年過ぎましたなぁ」
ヴォジェック 「もう一周年か」
ゼベル 「まだ一年って感じですな」
レグネド 「ま、一杯」
最強と謳われるモンスターたちも、仕事が終わればただのおっさんです。
「思えば、奥地に配置されて、冒険者が気まぐれに訪れるのを待つ日々だった……」
「おぬしはまだよいではないか。わしなど、EXダンジョンの41Fなんてハンパな場所だから、居ることにすら気づかれなかったぞ」
「私だって、倒さずにクエアイテムが手に入るものだから、盗るだけ盗って去っていく『自称勇者』がどれだけいたことか!」
「レグネドよ、おぬしはどうだ。クエの依頼に『先に進んではならぬ』なんてセリフがあるから、かえって行く者も多かったんじゃないか?」
「えっ! そうだったのですか!?」
『最強』にもやはり年功序列は存在するようで。
「わ、私は平和主義者でして……あまり戦いたくないので、遺跡の奥にこもって、怖い噂とか流して、人が来ないようにしていたのに――」
「逆効果だな、それは」
「だな」
「がーん」
何かを実行する時には、まず先輩に相談しましょう。
「ところで、おぬしらのところにも、アレは来たか?」
「……アレですか」
「アレですな」
「? アレとは?」
新人に分からない話題を持ち込むのは、古株の悪いクセです。
「なんだ、知らんのか。トルヴェールを荒らしまくっておるトレジャーハンターよ。見かけは小柄な人間だが、いざ狙いをつけるとエピックだろうがレジェンドだろうが、目的のものを手に入れるまで追いかけまくるという……」
「わしも、散々追われてな、とうとうニードルエッジを渡してお引取り願ったよ」
「そ、それは本当に人間なのですか!?」
「人間だとも。しかも元はカンプスなのに、途中から銃に持ち替えて、遠くからちまちま攻撃してきやがる」
「アビリティが使えない銃攻撃など、たいしたことないのでは?」
「それがな、ステータスを見たら、腕力66魔力66器用さ138だったぞ」
「ちょwww なんだその間違った振り分け!」
余計なお世話です。
「二週目クリアするまで、全部平均で振ってたんだな。武器集め始めてから、なんちゃってガンナス続けるために、器用さをあげた、と」
「それで、魔法攻撃もあまりダメージないし、こっちの攻撃避けまくってたのか」
「いやはや、もう二度と会いたくない――」
そんなに嫌がらなくても。
「そんな恐ろしい者が徘徊しているのですね……」
「おぬしのところにも、そろそろ来るぞ〜」
「お、脅かさんでください!」
新人をからかって遊ぶのも、古株の悪いクセです。
「こんにちは〜」
「そう、こんな感じの能天気な声で……」
(((でたーーーーっ!!!)))
「レグネドさん、お伺いするのが遅くなりまして」
「いいい、いやいや、おかまいなく!」
それは来た人が言うセリフです。
「そ、それじゃ、わしはそろそろおいとまする!」
「私もこの辺で……」
「ちょっと用事を思い出した――」
「えっ! ちょっと待ってください、皆さん!」
「「「がんばれよ〜」」」
そそくさと、その場を立ち去っていく
おじさん エピックたち。
「…………」
「レグネドさん」
「は、はひっ!?」
「お相手よろしくお願いいたします」
遺跡の主が凍りついたのは気のせいでしょう、たぶん。
――戦闘終了――
「うう、いつの間にかカンプスになってるし……攻撃ボタンに、毒とコンボ123しか登録してないし(←基本攻撃がない)、魔法攻撃全然効いてないし(←耐性防具ばっちり)……恐ろしいっ!」
遺跡の隅で、がくがくぶるぶると震えている主を、部下のガイコツたちが必死に慰めています。
「ふむ、これがクロスエッジですか。ありがとうございます。――ん?」
入手したクロスエッジ一対 攻撃力11+15
さっき拾ったデビルホーク一対 攻撃力23+25
「……レグネドさん。言い残したいことがありましたら、聞いてあげますよ?」
「ひぃぃっ!?」
***
――その後、レジェンドやエピックモンスターの間には、ガンナスもどきからカンプスに戻った冒険者の噂が、恐怖と共に囁かれていた。
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『脅威の呼び声』。
レジェンド以上の強敵が現れる時の音楽。
まさか、この題名を使う日が来るとは……。
ガンナスもどき。
略してがんもどき(殴)。
まぁ、その。
色々とゴメンナサイ。
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