?黒エレ ←→ 白エレ?
EX:ベネスの繭
「ベネスに誰か入り込んだみたいだ」
沈痛な面持ちでしょぼんとしているアドニスに、ふわりとフェデルタが微笑んだ。
「まぁ、大変。アドニス様、私が行ってまいりますわ」
「フェデルタお嬢様、ここはわたくしが」
「お、お、おいらも」
心配そうに申し出るアンビシオンとグードにも、フェデルタはたおやかに答える。
「いいえ、あなた達はアドニス様をお守りして。様子を見てくるだけですもの、大丈夫よ」
「危ないことがあったら、繭なんかどうでもいいから、すぐ戻ってくるんだよ」
「アドニス様はお優しいですわね」
女神もかくやという笑顔を浮かべて転移するフェデルタを、残された者たちが、「いってらっしゃーい」と暖かく見送った。
***
「この辺りだったと思ったのですけれど」
霧に包まれていたはずのベネスは、今はきれいさっぱり乾燥地帯となっていた。
きょろきょろといていたフェデルタは、なんとか見覚えのある広場を見つけ、そこあるはずの「繭」を探した。
だがそこには。
1/25スケール※くらいに縮んだ、ミニチュアの繭が鎮座していた。
どうやら、残っていたソーマを根こそぎ吸い取られたらしい。
※栃木の東武ワールドスクウェアの、世界のミニチュア建物のスケール。
膝くらいのスフィンクスとか凱旋門とかがあるらしい。
「ああああ! アドニス様の繭が……」
おいたわしい、とフェデルタがもらい泣きしていると、巨大キノコのカサの上で昼寝をしていた者が、その傍らに飛び降りた。
「こんなところに来る奴がいるなんて珍しいな」
ベネスの気候を変え、繭をこんな姿にした犯人に決まっている。
「きゃあ! 来ないでくださいまし!」
大丈夫と言った勇気はどこへやら、パニックを起こしたフェデルタが、目を閉じたままソーマの塊をいくつも投げつける。
その一つは、まぐれでエレオスの方へ向かった。
「おっと!」
とっさにエレオスは、後ろ手に持っていたものを前に放り出した。
「「「……」」」
自分の足を見下ろして、呆然としているのは、一匹のテイル。
ようやく人間の器を手に入れて、出番交代できるはずだったのに。
「な、なんて子なの、罪もないテイルを身代わりにするなんて……。ていうか、どっから出したんですの!?」
「キューーーっ!!」
フェデルタとテイルの抗議はどこ吹く風。
「なぁ、これから何するんだ?」
聞かれると、つい真面目にスケジュール帳をめくりながら答えてしまうフェデルタ嬢。
「ええと……セクンダディのマスターとの話し合いと、アレーティア様のお出迎えですわ」
「面白そうだな。他にやることもないし、勝手についてくぜ」
「アドニス様、ごめんなさい――」
フェデルタ嬢は、涙目になっていた。
Act.4:古の護り手
「あんたがマスターラバンか?」
「おお、君がアドニスの代理かね?」
突然執務室に現れた若者に驚きつつも、マスターラバンは用意していた光の鍵を、丁重に取り出した。
「ほれ、これがアドニスのアポクリファじゃ」
「なんだよ、用意がいいな」
「当然じゃ。あの頃、野心の塊のようだったわしが、見つけた繭で眠っていたアドニスから、取り上げてしまったのじゃ。いつか返さねばとは思いつつも、なかなか機会がなくてのう」
マスターラバンは、すっかり穏やかな好々爺という顔で、懐かしそうに鍵を眺めている。
「アドニスには、すまなかったと伝えておくれ」
「ふーん。まぁいいや、もらっとこう。でも、俺の目的はこっちじゃないんだ」
「ん?」
若者が手をかざすと、執務室の巨大なコンピュータが、ぽん、と火を噴いた。
「ま、待たぬか! そんなことはせんでも、アポクリファは……」
「それとこれとは話が別」
エレオスが、ニヤリと笑う。
「ちょっとセクンダディが邪魔になったんでね」
「ふぉっ!?」
古都マラン・アサには、二度目の爆発音が轟いた。
***
操縦桿を握っていたモニカが、通信で送られてきた映像を見て、呆然と呟く。
「隊長――」
「どうした?」
「セクンダディ本部が、
ありません……」
「? ありませんとはどういう意味だ?」
「言葉通りで……建物が、跡形もありません」
「イシュタル、どういうことだ?」
「賊の襲撃があったのよ。マスターラバンはショックでヘースヒェンに閉じこもってしまったわ」
「アドニスたちですかね?」
「いいえ、あれは教主庁のエレオスよ」
イシュタル監理官の言葉に、カデンツァが溜息をついた。
「エレオスならやりかねないなぁ。面倒くさがりだから、話し合いとか嫌がるし」
「……親友なら普通そこは、そんなことするはずないとかばうところじゃないのか」
あきれるジャディスに、カデンツァは苦笑する。
「うーん、でも本当のことですから」
それに、と続ける。
「ぼくが、セクンダディの命令で動いてるのが気に入らなかったみたいで」
――これは、お前のせいか。
ズームアップされた、見る影もないセクンダディ本部跡地の映像を見ながら、第七隊員たちは心の中で呟いた。
***
雪山を登り、ようやくたどり着いたゾーリャ山頂。
厭味と挑発の応酬もそこそこに、激闘が開始された。
おろおろと双方を見比べて、カデンツァが声をかける。
「えーと……エレオス? 隊長、グラナーダ?」
「「「危ないから下がって(ろ/てください)!」」」
三人に同時に叫ばれて、困惑するカデンツァ。
「……ぼくの立ち位置って一体?」
「賞品」
「えー?」
他の者たちは、隅でどちらが勝つか賭けなどを始めている。
(※怖くて参加できない)
さて、賞品の取り合いも佳境に入った頃。
奥の間から恐る恐る顔を出したアドニスが、エレオスに呼びかけた。
「あのう、そろそろタワーに行く時間ですが……」
「ちょっと待て、土産持って行く」
空間転移で、エレオスがカデンツァの背後に現れた。
「いっただき!」
「うひゃあ!?」
「あばよ!」
二人の姿が消えた。
置いていかれたアドニスたちも、あわてて後を追って消える。
何やら順位が変わりつつあるようだ。
「おのれ、うちの隊員に手を出すとは!」
「よくもカデンツァ様を――許さん!」
第七中隊の攻撃目標は、アドニスたちから微妙に変更された。
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黒エレ、大暴走。
白エレが、いつにも増して不憫なことになっております。
さて、とても和やかそうなアドニス一派。
マスターラバンもいい人で、きっとこのままだったら世界は平和にアレーティアを迎えられたことでしょう(ぉぃ)。
エレオスVS隊長+グラ姐の場面は、元とあまり変わらないのは仕様です。きっとそうです。
すいません、act5が意外と長かったので、もう1回続きます。
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