教主国 ――夜想曲(ノクターン)
「第一僧兵隊が壊滅したってホントですか!?」
研究室に、砂漠の観測地点に駐在していた観測隊員が、駆け込んできた。
喫茶室にでも立ち寄って、噂を仕入れてきたのだろう。
「なんでも黒い悪魔に殴りこみかけられたとか!」
「その悪魔は、うちの隊長だ」
「……ハイ?」
「ただの昇進試験の話だから」
ちょっと落ち着け、と渡されたお茶を飲み干して、一息。
「試験って一体?」
「エレオス様は、研究分野の大抜擢で第一に入っただろう。今回は戦闘班の試験を受けたんだ」
「ああ、それで。でも、なんで突然」
「さぁ、そこまでは」
「……その経緯、聞いていたかも」
奥で黙々と観測データを整理をしていた一人が、恐る恐る手を上げた。
***
「欲しいものがあるんだけど」
「俺に頼まなくても、大抵のものは手に入るだろ」
「エレオスじゃないと無理」
「……何が欲しいって?」
「エレオスの戦闘班、合格通知」
――ごん、といい音がしました。機器にぶつかったようです。
「俺が今まずい立場なのは、お前が一番よく知ってるだろうが!」
「だからだよ。エレオスの実力見せておけば、教主庁から追い出すことなんてできないでしょ」
「ぐ……」
――これ以上役職が重くなると(会う)時間がなくなるとか、ぶつくさ言ってます。
「何か見返りあるんだろうな」
――受かる気は満々ですね。
「そうだねぇ。丸一日ぼくを貸切とか」
「……一日、じゃなくて、丸一日?」
――確認するのはそこなんですか。
***
「その結果が」
「第一僧兵隊、ほぼ壊滅」
――本気出しすぎです。
「それで、エレオス様は戦闘班に配属されることになったんですか?」
「いや、最後の相手に勝てなかったんだ」
「相手はきっと大隊長ですね」
「違う。大隊長は審判だから」
「……他に、エレオス様を止められるような人、いましたっけ?」
「最後の最後に、カデンツァ様とクロが飛び入り参加」
「「あーーー」」
――そのラスボスでは、手も足も出ません。
「部外者だからノーカウントだったんだが、エレオス様自身が納得しなくて、合格は見送りってことに」
「さもありなん」
「何もかも、カデンツァ様の思惑通りですねぇ」
――あのお方には誰もかなわないのでしょうか。
「それで、隊長は?」
「カデンツァ様との対戦時に、どうやらクロが力使ったらしくて、倒れた」
「気の毒すぎる……」
「つきっきりで看病されてるけど」
「あれ……幸せ?」
――複雑な顔でフテ寝しているのが目に浮かびます。
「それで、我々の取るべき態度は?」
――慰めるか、激励するか、それとも。
「何事もなかったかのように、データ収集の続き」
「だな」
隊員たちは、それぞれ自分の持ち場に戻った。
おわり
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約束通り、丸一日貸切。
カデンツァ様、嘘はつきません。
実地試験の時は、黒エレ風の服だったようです。
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