「大混戦――または西岐軍最強の座」
注意:これは「ゲーム」です(笑)三回目のプレイ時ということで…。
「天化、一番怖い攻撃とか特技って何だと思う?」
「そりゃー間違いなく、公主の「鈴花笑」だろ」
「味方にはかからないのに?」
「だから怖いんじゃねーか……」
*
穿雲関(せんうんかん)。
「天化! 待ってたよー!」
ようやく登場となった天化に、太公望が飛びついた。
三回目ともなれば、いいかげん、あいさつも省こうと言うもの。
「おー、久しぶりだな」
「でね、さっそくなんだけどお願いがあるんだ」
目をきらきらさせた「お願い」に、ロクなものはない。
「却下」
「ひどいですわーっ、まだ何も申し上げておりませんのに!」
「公主の真似は止めろ、すげー不気味だ。……で、何だ? 話だけは聞いてやる」
「天化は幻惑術の素質あったよねぇ」
「春眠光くらいは使えるが」
「だから……はい!」
「はいって、これはお前の打神鞭……」
「交換ね」
「交換……ああっ、俺の莫邪!」
いつの間に抜き取ったものか、天化愛用の剣を抱えて太公望がすたこら逃げていく。
「待たんかい、このボケ!」
太公望は足が速いので捕まえるのに苦労した。マップ中走り回り、前の戦闘で自分の掘った穴に落ちたところでようやく首根っこを押さえる。
「うえーん、いつも打神鞭ばっかりだから、剣も使ってみたいんだよー」
「そんだけかよ。他の剣でもいいだろうが」
「――どうせ使うならブランド品」
「……(高級志向め)」
「だめ?」
今度は目をうるうるさせて泣き落としに入る。
太公望の涙にも弱いが、使ったことのない武器というのも、武器マニアの天化としては確かに魅力だった。
「――1ステージだけだからな」
「やったー!」
よほど嬉しかったのか、太公望はそのまま師匠の元に修行に行ってしまった。
*
「で」
天祥が、空を見上げて、ふうとため息をつく。
「結局ここまできちゃったんですね」
第五章。
あとは姐己と紂王との対戦を残すのみ。
「こいつ(打神鞭)、使い慣れると結構面白くてなぁ。無限倒落まで使えるとかなりのもんだぜ。元始天尊様(脅して)に3までレベルアップしてもらったから効果も威力も増えたし」
「大抵の武器を使いこなす兄上が、打神鞭を使っててもそんなにはおかしくないんですけど……。朱雀剣を連発する太公望さんって、違和感ばりばりなんです」
「臨戦功使って、一撃必殺だもんな。怖ぇ奴」
大将の、戦闘時の活躍ぶりを思い出して、ちょっとひきつる二人。
「でも天祥、お前だって今回槍使ってるじゃないか。まぁお前は元々素質が高いからな。もう冬将羅刹、覚えたんだろ? 弓は誰にやったんだ」
「……上」
「え?」
「父上。九火輪を使ってみたいって……」
「似合わねぇ……。弓で一騎打ちなどできるかって言ってやがった癖に――」
「皆に内緒で、洞府で練習してるみたいです……」
「まぁ、三回目だからな」
「三回目ですからね」
二人して、空を見上げてため息。
**
「どわあああっ、なんで俺ばっかり狙ってきやがるんだ!?」
紂王・姐己の集中攻撃を受けて、さすがの天化も悲鳴を上げる。
「僕、思うんですけど」
安命術をかけながら、天祥が呟く。
「紂王って、打神鞭持ってるのが大将、ってインプットされてるんじゃないかな」
「そうか! ……って、武器交換なんかできないしなぁ」
「がんばって耐えてね、天化。この後、姐己、蚩尤戦が残ってるんだから!」
「そう思ったら、お前も安命術かけろよっ!」
「えー、僕、今回は特攻隊長だから」
じゃ、そういうことで、と言って、さっさと姐己の元へ走っていってしまう太公望。
武器が変わると性格も変わる。
「あんのヤロウ、二度と莫邪は貸さねぇぞ、覚えてろ。……って、あいつ、いつもこんな攻撃受けてたんだなぁ……うわっ」
再び紂王の玄武槍。HPぎりぎりまで減らされるので、次に攻撃を受けるとザコでも怖い。
「まぁ、大変」
気の抜ける声を上げて、公主が「完治」をかけれくれた。
とりあえず、一安心。
遠くの方で、姐己が負け惜しみを言って逃げていくのが見えた。
太公望は一対一で倒してしまったらしい。
これで、残るは紂王一人。
「よっしゃ、集中攻撃行くぜ!」
「天地双鳴!」
「九火輪!」
「冬将羅刹!」
「打神鞭!!」
(注:それぞれの声に吹き替えてお読みください)
「お、おのれっ、このような奴らに! 納得できーん!!」
精鋭パーティの攻撃に耐えられるわけもなく、微妙に正気に返った紂王が倒れ付した。
***
素早い独角烏焔獣と、あなどれない攻撃力をもつ烏鴉兵を引き連れた、姐己との戦い。
容赦なくHPを削られる仲間たちの間を、戦闘中とは思えないのんびりぶりで公主はうろうろしている。
「あらあら、大変〜」
その時、ピロリンと音がして、公主の隣にいた烏鴉兵の目がハートになった。
特技「鈴花笑」。
混乱した烏鴉兵はふらふらと姐己の方へ向かった。
引かれた弓が、へろへろ〜っと飛ぶ。
それは、さくっと姐己に命中した。
「あ」
全員の声が重なった。
「お、おのれ〜っ、わらわがこのような最期など……納得できんわ〜っ!!」
蚩尤に後を託した、最強(のはず)の妖魔の最後の言葉が、マップにむなしく渡く。
「――な、怖いだろ、鈴花笑」
なおも混乱し続ける烏鴉兵を、打神鞭でぱこんと殴り倒し、しみじみと天化が呟く。
「うん、怖い。王貴人も、胡喜媚もこれで倒しちゃったもんね……」
「争い事はいけませんわ、皆様〜」
「西岐軍最強」の異名を得た公主の、ありがたいお言葉であった。
その後、蚩尤はやはり容赦ない攻撃をくらって、あっさり倒れ付し、ショックのあまり眠りについたという噂である。
END
ゲーム版「封神」の中でも、ゲームの話ということで……。
怖かったですね、「鈴花笑」。
特に後半、侮れない攻撃力の敵兵が、ボス敵を倒してしまうことが多くて。
マップ中から、「ああ、俺の経験値〜」という悲鳴が響き渡ってました。
せめて、鈴花笑で倒した経験値は公主に入るとかだったら、あきらめもついたんですけど(^^;
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