「聖夜」


「兄上ー!」
息を切らせてかけつけてきた天祥が、昼寝をしていた天化に飛びついた。
「くりすますってなんですか?」
「はぁ?」
妙なことを聞かれて、さすがに目が覚める。
「また、そういう時代考証を狂わすようなことを……」
「いいじゃないですか、ねぇ、兄上ー」
「仕方ねぇなぁ」
可愛い弟の頼みに天化は滅法甘い。
「きりすとって奴が生まれた日の祝いだな」
「お誕生会なんですね。そういえば、この間、太公望さんのお誕生会やりましたねぇ(^^)」
(……きりすとが生まれるのは千年ほど後だがな……)
「それから?」
「樅の木……大きな常緑樹に色々飾って」
「うん」
「大きな袋を持った白い長いヒゲのじいさんが、となかいって鹿みたいな奴の引いたソリに乗って、子供に贈り物を配って回って」
「うんうん!」
「けーき……まぁ月餅だな、を食う」
「うわぁ、くりすますって楽しそうですね! 那咤や雷震子にも教えてあげよっと!」
「あ、おい!」
止める間もなく、天祥は駆けて行ってしまう。
何故か、えらくまずいことをしでかしたような気がした。
呆然と見送って、それが何か考えてみる。
――が、どこがいけないのか分からない。
「……ま、いいか」
天化はあきらめて、昼寝を続行することにした。

*

「天化〜っ!!」
「お、なんだなんだ!?」
耳元で叫ばれて、飛び起きる。
「君、一体子供たちに何を教えたんだ!?」
「あ? 何って……」
「自分がしたことをよく確認しろ〜っ」
もう日は落ちて、辺りは暗い。
ずるずる引っぱられて、本陣の広場につれて行かれた。
普段静かな陣内が、妙に明るい。
そして、目の前の光景に固まる。
「う……」
どこから運んできたのか、巨大な松の木に、符印やら宝珠がにぎにぎしくつるされている。
飛来椅を引いた四不象が無心にその葉を食んでいる。
その前では、元始天尊と雲中子が蜈蜂袋と風袋を持ち、子供たちに小さな宝貝を配っていた。
「あちゃ〜……」
飾りをつけた常緑樹。
鹿(のようなもの)に引かれたソリに、袋を抱えた長いひげのじいさん。
公主が作ったらしい巨大な月餅。
なんとなく、間違ってはいないのだが。
「俺……もしかして、とんでもないコトしたかな……」
「遅い!」
太公望が、打神鞭で天化の頭をはたき倒した。

**

「ま、子供たちは喜んでたから……いいか」
と夜が更けて、騒ぐのだけが目的だった異国の祭りも終わり、ようやく静けさが辺りを支配する。
冷えた月光が荘厳に降り注ぐ。
年に一度の聖夜。
新しい太陽を迎える冬至の祭りでもあるという。



星が降る聖夜に祈りを捧げよう
太陽の光、月の輝き、星の瞬きに
願いを込めて祈りを捧げよう

星が奏でる音色を聴きながら
星の囁きに耳を澄まして
全ての思いを込めて祈りを捧げよう

願いを叶えたまえ
絆が一生涯切れる事のないように
皆が幸せにすごせるように
皆を護りきれるように



「大人はしゃんぱん飲むんだよね。ないから、はい、月下桂酒」
「お前は飲むなよ(汗)」
「なんで?」
「やかましい、絶対飲むな!」
「変なの。……別にいいけど。僕は茉莉花茶持ってきたから」
良く似た色の金色の雫。
「あ、雪」
白い妖精がふわりと舞い降りる。
「明日は積もるな」
紡がれる祈りは異国のものだけれど。
「世界中の聖夜に」
「乾杯」

合わされた杯が涼やかな音を立てた。

END


時期ネタです。
たまにはいいですよね(^^)。


TOP/小説/封神演義編