雪合戦
辺りに舞う白い結晶。積もった雪が風で吹き上げられてきている。
「風花だ。……明日は雪上での戦いになるね」
「雪に慣れてない奴は足を取られるぞ。配置に気をつけないと、取り囲まれる危険が……おわっ!?」
珍しく真面目に話していたのに、どうもこの軍は色々と横槍が入る。
今回の邪魔は、大きな雪球だった。子供たちの雪合戦の流れ弾らしい。
顔面に食らいそうになったのをなんとかぎりぎりで避け、怒鳴り返す。
「てめえら、遊ぶならもっと奥でやれ! ここは明日は戦場だぞ、……ったく緊張感のねぇ――」
「てんかちゃんもやろうよぉ」
真上からの声に、ぎょっとして顔を向けたが遅かった。
上から、腕いっぱいに抱えていたらしい雪が落ちてきた。
さすがに避けきれず、雪まみれとなった姿に、悪いと思いつつ太公望が噴き出す。
「お前なぁ……」
「てんかちゃん、きょうは、ゆきしかつかっちゃダメなの!」
「〜〜〜っ!」
剣を引き抜いて朱雀を呼び出そうとしていた天化が、絶句して手を止める。
那咤のようなケンカごし相手ならともかく、遊びの延長という意識しかない雷震子の無邪気な言葉は勝手が違う。
迷っているうちにまた後ろから雪球が飛んで来た。今度はまともに後頭部に食らう。
「那咤、てめぇ!」
「くやしかったら、俺に当ててみろよ!」
「後悔すんじゃねぇぞ!!」
止める間もなく、雪球の応酬となる。
いつの間にか目印となった大きな木を境に、子供軍(那咤、雷震子、天祥)と奇襲を受けた大人たち(天化、金咤、木咤)との合戦になっていた。
一方その頃。
「いつになったら終わるんでしょうねぇ」
「さぁ」
韋護が乾坤術で作り上げたカマクラから戦況を眺めつつ、太公望は甘茶などを飲んでくつろいでいた。
*
翌日。
朝歌は近い。敵も妖魔が増えつつある。
――決死の戦い……を覚悟していたのに、なんだか様子が想像と違っていた。
「なぁ、大将」
「なんだい、天化」
「俺にはどうも、ただの雪合戦に見えるんだが……」
「うん、僕にもそう見えるよ」
同意されてもあまり嬉しくない。
たかが雪球と侮るなかれ。那咤や雷震子の力で握られた雪は、鉄の塊に近い。
近づこうとする敵兵は、次々に子供たちの雪球の餌食となり、こちらにたどり着く前にばたばたと倒れていく。
崖から落とされた大雪玉が、なんとか残っていた妖魔たちを巻き込んではるか彼方へ転がっていく。
敵の秘密兵器であった独角烏煙獣は、手を出すまでもなく落とし穴に見事にはまっていた。雪で隠された穴は、術を使った罠以上に見分け難い。
穴から出ようともがくが、動けば動くほど雪が崩れ、動きがとれなくなっている。
すかさずそこに、雷震子が用意していた雪を崩して埋めてしまう。
……すっかり、子供たちの独壇場だ。敵陣を制圧するのも時間の問題だった。
とうとう愛剣を抜くこともなかった天化は、ため息をついて踵を返した。
「アホらし。――俺、本陣に帰って寝る」
「あ、天化、ちょっと待ってよー」
その日の戦いは、子供たちの活躍で大勝利に終わった。
勝利の記念に、戦場にはずらりと倒した敵の数だけ雪だるまが並んでいたらしい。
END
独角烏煙獣が、穴に埋もれて動けなくなっていたのは……実話です。わざとじゃなかったのですが、乾坤術で穴掘っていたら、勝手に落ちてくれて。
段差が高いと、敵キャラは身動き取れなくなっちゃうみたいです(笑)。
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