雷鳴
「よく来た。天の五行、地の五行よ」
凍てついた声が、修羅界にたどり着いた者たちを迎えた。
闇の世界に、途方もなく大きな姿で現われたアスラ。
これはイメージの具現化。
アスラの力が、恐ろしく強大であることの証。
神将たちがアスラの周りに等間隔に散り、天の五行の結界を張る。
普段の戦いでは、誰かしらが三蔵に降り、その身体を媒介にして、力を発揮するのだが。
……今回は、アスラの力を修羅界に留めるために、動けない。
人間である三蔵と、その仲間たちが自分たちの力だけでどこまでできるか、見守るしかない。
シャン、と三蔵の手元で錫杖が鳴った。
神降ろし。
残された一人が、三蔵に降りる。
圧倒的な雷気が、結界の中に充満した。
飛び散る稲妻が、闇黒であった世界に光をもたらす。
「さすが、九天雷帝殿、凄まじい力ですね……」
「――でも、なんかヘンじゃねぇか?」
五行から外れ、人間界に留まったという、かつての武将を降ろしているにしては、あまりに三蔵は「自然」だ。
いつもなら、少なからず降りた者の神気に影響されるのに。
「……私ではないぞ」
発せられた低い声に、神将たちが仰天する。
それは、今、三蔵の中にいるはずの者の声だった。
「雷帝殿!」
「聞仲様? どうして、こちらに……」
三蔵に降りていたはずの神将、雷帝は、困惑気に結界の中心で戦いを見下ろしていた。
「私はまだ、何もしていない」
「しかし、現に三蔵殿は、雷の力を使って……」
では、あれは一体、誰だ?
「――太公望がいねぇ――」
辺りを見回していた炳霊公が、ぽつりと呟いた。
共に錫杖から解放されて、傍らに寄り添っていたはずの気配が無い。
では、あれは……。
「あやつ、私を押しのけて、三蔵に入ってしまった。さすがに二人入るのはまずかろうと思って、様子を見ていたのだが……あやつは神将ではないから、神気で三蔵に負担をかけることもないのだろう。制限がないようだ」
「ということは、桃源鏡(バトル封神の、仙力無限宝貝)装備状態……?」
「めっちゃ強いじゃん!」
術力に任せて、周りを囲んでいるアスラの五本腕――天の五行を模倣した、力の具象を叩き潰していく様子に、那咤太子が歓声を上げる。
他の神将たちは呆然と、六道の未来を賭けた、最後の戦いの成り行きを見守るしかなかった。
*
最後に残ったアスラの本体を前に、三蔵=姜公が告げる。
「貴方が、この世界を気に入らない、と考えるのは勝手です。けれど、それで世界を滅ぼそうというのは許せません」
どんなに争いごとや、戦いが絶えなくても。
何度、醜い妄執や絶望が世界を支配しようとも。
「――僕たちは、『この』世界が好きなんです」
大切な仲間たちが存在している、この世界が。
「というわけで」
コホン、と一つ咳払い。
「封印させていただきます!」
打神鞭の力を得た錫杖が、アスラの本体を打ち砕いた。
*
戦いの終わりを見届けて結界を解いた二郎神君が、気の毒そうに……しかし、笑いをこらえきれない顔で、炳霊公に言った。
「がんばってくださいね」
「何をだよ?」
「これからあの雷は、確実に貴方だけに使われるはずですから」
「………………(滝汗)」
三蔵から抜けた姜公が、にこりと微笑んで仲間たちを見上げる。
炳霊公は、雷の乱れ打ちに倒れ伏したアスラに、自分の姿を見たような気がした。
おまけ
姜公「鬼神でも神様だから、封神って言ってもよかったのかな、ねぇ、天化?」
炳霊公「俺に聞くなよ……(びくびく)」
END
バトル封神のキャラ紹介でまず驚いたのは。
ししょーが雷属性になっていたこと。
え、聞仲と同じ?って。
まぁ、木というのは表し難いですけどね。
雷技は派手だし(笑)。
三蔵に降りた姜公。
最強です。
悟空や涼鈴、出番なし。
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