「大熊猫」
ことの発端は雷震子の一言だった。
「らいちゃん、おおきくなったらぱんださんになる!」
移動中の小休止、食事の用意をしていた仲間たちが一瞬固まる。
「ははは……難しいだろうなぁ、パンダは」
「雷震子君の夢は個性的ですね」
素直に笑う子牙と、苦笑する楊セン。
「がんばれ雷震子! わしも応援するぞ!」
「応援してどうするよ、親父……」
「鳥さんならともかく、パンダさんはちょっと……」
太公望は、子供の夢を壊さないように、でも無理じゃないかとやんわりと告げる。
その言葉に、ふと思いついて天化は仲間を見やった。
「姿だけなら、なれないこともないんじゃないか? 楊セン、変化はあんたの十八番だろ」
「ほんと!?」
きらきらと目を輝かせた雷震子に飛びつかれ、言葉に詰まる楊セン。
「で、できないことはありませんが……」
期待に満ちたまなざしの雷震子と花鈴、そして太公望(笑)はともかく、ニヤニヤしている他の連中は「楊センがパンダになること」を面白がっているのが目に見えている。
自らお笑いのタネになることは、さすがにためらわれる。
「えーと……そ、そうだ、雷震子君。変化の術を教えてあげますから。習得すれば、自分でなれるようになりますよ」
「えー、らいちゃん、いまみたいー、いまなりたいー」
純真なお子様は一度思いこむと結構しつこい。
なんとかしないと泣き出してしまいそうな様子に、困り果てた楊センは、とうとう妥協案を出した。
「仕方ありません。特別に符印を作って上げます! それなら、今すぐにでもパンダになれますよ」
――どうあっても自分はパンダにはなりたくないらしい。
「わーい、やったー!」
「よかったね、らいちゃん」
手を打ち合って喜ぶ雷震子と太公望から逃げるかのように、楊センは姿を消した。
* * *
そして数刻後。
「なんだよ、変化の術の訓練じゃなかったのか?」
てっきり楊センが用意した符印とやらで、羽つき仔パンダに変化した雷震子が転げ回っているものと思ったのに。
幕舎の中では、珍しく雷震子が本を手にして何か勉強しているようだった。
「それがですね……」
楊センが深く溜息をついた。
「符印の効力を発揮するには、書かれた文字を本人が正確に読まないといけないのですが……」
「ん?」
「この符印、漢字で書いてあるんです」
「……」
なんとなく予想がついた。
追い討ちをかける、太公望と雷震子の会話。
「らいちゃん、これは?」
「いぬー」
「こっちは?」
「ねこー」
「よくできました。それじゃ――」
太公望は楽しそうに先生をしている。
……先は長そうだ。
「じゃあな、がんばれよ」
天化はあっさり背中を向けて、幕舎を出た。
END
パンダ旅行から帰ってきた私に、桔梗様からの貴重なネタが。
>楊センについて変化の術を習えば、らいちゃんでも将来はぱんだになれるっす。しかも翼付き。
>だから、子供の夢を甘く見てはいけません。
翼つきぱんだも魅力だったのですが、とりあえず現在形でお笑いに走ってみました。
「らいちゃん、おおきくなったら〜わしも応援するぞ!」までは、封神2で実際にフィールドでやりとりされる会話だったりします(^^;
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