例えばこんな西遊記
天の星が降るという異変が置き、そして河に流れていた赤子を拾ってから16年の
歳月が過ぎたある日のこと。
金山寺に、皇帝よりの使者が訪れた。
夢に観音菩薩が現れ、天竺へ向かうように告げたという。
金山寺の長である法明和尚は弟子たちを眺め、尋ねた。
「天竺へ行ってくれる者はおらぬかの?」
だが、長安から天竺までは十万三千里。
人家を離れた場所では盗賊、妖怪変化の類も現れる。
とても普通の人間が辿りつける場所とは思えず、誰もが躊躇した。
予想通りであったので、法明は別段驚かなかった。
「誰もおらんのか……。仕方がないの、
では、わしが行くとしよう」
当然、弟子達は仰天して止めた。
だが、法明の意志は固く、長老の決心はゆるがないようであった。
「天竺までの道のりは、観音様が守ってくださるじゃろう」
寺の小間使いである玄奘が夢で預かったという錫杖を手に、都から派遣されたわ
ずか二人の供を連れ、遥か西の地へと旅立ったのである。
***
両界山。
ここは国境。皇帝の力及ばぬ地域では、妖怪変化や盗賊が跋扈する。
早速、怪しの者が現れた。
あっけなくお供の剣兵、槍兵が倒れてしまい、法明はここまでかと観念した。
そこに、不思議な声が響く。
「おい、そこのお前! 岩の札を剥がしてくれ、そしたらそんな奴らやっつけてや
る!」
声に導かれ、法明はほいほい、と岩を駆け上り、札を剥がした。
岩の中から飛び出したのは、真っ赤な巨躯の大猿の妖怪だった。
あっと言う間に並み居る妖怪をなぎ倒すと、変化を解いて赤毛の少年の姿になっ
た。
「よっ、爺さん! 借りは返したぜ。じゃな!」
「待たんか」
駆け去ろうとした悟空の頭に錫杖を振り下ろす。
ごん、といい音がした。
石頭の猿だが、天界の錫杖を受けて、ぷしゅうと倒れてしまう。
「ここで会ったのも観音様のお導きであろう。そちをわしの従者としよう」
「何言ってやがんだ、つきあってられるか!」
「謹んで勧請したて奉る、南無事の一念三千輪圓具足未曾有の大曼荼羅御本尊、別
して南無久遠実成大恩教主本師釈迦牟尼仏……」
「ぎゃああ、頭がいてぇぇ!」
高僧によるありがたいお経も、悟空にはとっては頭痛を起こす説教である。
しかも法明はお年寄りのご多分にもれず、話が終りそうになっても最初に戻ってぐ
るぐると永遠に続いてしまう。
「わ、分かった分かった、お供でもなんでもするから、勘弁してくれっ!」
「うむうむ」
カラスが鳴く時刻まで説教を聞かされた悟空がとうとう音を上げ、法明に頼もしい
従者が出来た。
悟空を諭そうと待機していた観音が、出番を失って顔を出し損ねたのはナイショで
ある。
***
道中、様々な仲間をゲットしつつ、順調に旅路を急ぐ法明一行。
天竺、そして大雷音寺。
ついに天界にまで到達してしまった。
世界を書き換えようとするアスラと対峙した法明和尚は、静かな怒りを湛えて命じた。
「助さん、角さん、お銀、八兵衛、弥七! やっておしまいなさい!」
作品違ってるし!
でもなんか人数合ってるし!
いちいちツッコむ気もなくした仲間の妖怪たちが、悪代官、もとい鬼神アスラを叩きのめ
す。
法明も、黄門様の三代目か四代目と言う勢いで、錫杖を振りかざして大立ち
回り。
見事アスラを倒したのである。
世界の平和を取り戻した法明に、観音からのお言葉があった。
「これからは仏として、この天界を守ってくれますね」
「承知いたしました」
引き受けちゃうのかよ!
「だってぇ、元々仏に仕える僧侶だし? 人間のままだと老い先短そうだし?」
「頼むから女子高生言葉はやめてくれ」
年齢だけは一番若い老人は、ほっほっほと高らかに笑った。
観音の計らいで人界へ戻った法明とその一行は、金山寺へ戻り、旅の無事を報告した。
その後、釈迦より託された経文を読んでいるうちに、風にさらわれていなくなってしまった。
人々は、天上で仲間たちと暴れているに違いないと噂しあったそうな。
おわり
光栄西遊記のエンディングムービーに、何気無く法明和尚がおいでになるのです。
旅の仲間たちにこっそり混じって。
それを見てから再プレイすると、「誰か天竺へ行ってくれぬか? 誰もおらぬの
か……」
のセリフの後、「ではワシが」と言い出しそうでどきどきします(私だけだ)。
元気なお爺ちゃん、格好いいですよね。
黄門様しかり、ガンダルフ様しかり。
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