麒麟の章 ―子牙―
落ちるような感じがして、気がつくと見覚えのある場所にいた。
洞窟の入口だった。
「やった、村のパオだ!」
「戻れたみたいだな」
俺は駆け出して、おじいの天幕に飛び込んだ。
猪一頭も獲れなかったのかなんて笑われる前に、今日のこと話してやらなきゃ。
「おじい、今日は大変だったんだぜ!」
「おお、戻ったか」
おじいは大きなナベをかき回している。
……このナベ、見覚えがあるような……。
「ふぉっふぉっふぉっ、今日はキノコ鍋だぞ」
「……へ?」
「これで子牙も食べられるキノコを覚えたであろう。狩りはまた明日にしておけ。ふぉーっふぉっふぉ」
ぐつぐつ煮られているのは、俺が集めてきたキノコ。
串にさして焼いている分が、いい匂いをさせてやがる。
そしてナベの横には、確かに俺の足跡。
ようやく俺は叫んだ。
「……このクソじじい!」
殴りかかってみたが、簡単に避けられて、巨大なおたまを渡された。
ナベをかき回す役を押し付けられちまった。
笑いながら、白唱が火に薪をくべている。
――ちくしょう、明日こそは絶対猪狩りに行くぞ。
白唱もヘビに噛まれた傷なんか、すぐに治るだろ。
なんたって、俺が取ってきた「薬効のある貴重なキノコ」が山ほど入ったナベを食べるんだからな!
おわり
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