四神伝 ―天化―10


「天化、天化ーっ!」
「うわっ、な、なんだっ?」
外は小春日和。
書類を見ている間に、いつの間にかうたた寝していた。
怒られるのかと思って飛び起きたが、太公望はそれどころではないという顔をしていた。
「庭、見た?」
「へ? 庭?」
ぐいぐい、と引きずられるように、黄家の中央に作られた広い中庭に連れて行かれる。
一見、いつもと何も変わらぬように見えるのだが。
良く見ると、四神相応の土地を表現した庭に、奇妙な住人たちが増えていた。
北の大岩の上で甲羅干しをする亀。
南の止まり木で、他の小鳥たちと一緒に粟をついばんでいる鳥。
東の池で鯉に混じってエサを奪い合っている奇妙な魚。
西の砂場で気持ちよさそうに寝ている白い猫。
「てめえら、なんでここにいる……」
ミニ四神共だった。

「ここは居心地がよくての〜」
「まぁ細かいことは気にするな」
「エビのすり身はなかなか美味だった」
「にゃふーにゃふー……(いびきらしい)」

「すごいねぇ、天化。黄家が世界の中心だよ」
凄まじく嫌そうな顔で太公望が言った。
ていうか、つっこむのはそこかよ!
いいのかよ、それで?
中央の東屋では、麒麟がいちゃいちゃしている。
「我愛麟ーーーっ!」
「やだわ、麒ったら」
ヤツが恥ずかしげもなく愛を叫びまくってる限り、当分人界は平穏だろう。
すべて世はこともなし……なのかもしれない。
ただし、かんかんに怒って出て行った太公望が、当分屋敷に近寄らないということだけは、容易に想像できた。



おわり







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