四神伝 ―太公望―7


庭師によって手をかけて整えられた綺麗な庭。
お気に入りの場所は、その日は何か様子が違っていた。
それが何であるか気づき……ぼくは天化の部屋に飛び込んだ。
「天化、天化!」
「うわっ、と、な、なんだっ?」
どうやら、書類を片付けている途中で、うたた寝してしまったらしい。
珍しく真面目にやっているかと思えば、この男は。
しかし、それどころではない。
「庭、見た?」
「へ? 庭?」
ぐいぐい、と引きずって、庭に連れて行く。
一見、いつもと何も変わらぬように見えるのだが。
四神相応の土地を表現した黄家の庭に、奇妙な住人たちが増えていた。
北の大岩の上で甲羅干しをする亀。
南の止まり木で、他の小鳥たちと一緒に粟をついばんでいる鳥。
東の池で鯉に混じってエサを奪い合っている奇妙な魚。
西の砂場で気持ちよさそうに寝ている白い猫。
「てめえら、なんでここにいる……」
ミニ四神共だった。

「ここは居心地がよくての〜」
「まぁ細かいことは気にするな」
「エビのすり身はなかなか美味だった」
「にゃふーにゃふー……(いびきらしい)」

「すごいねぇ、天化。黄家が世界の中心だよ」
皮肉を込めて言うと、天化ががくりと肩を落とした。
中央の東屋では、麒麟がいちゃいちゃしている。
「我愛麟ーーーっ!」
「やだわ、麒ったら」
あれが恥ずかしげもなく愛を叫びまくってる限り、当分人界は平穏だろう。
すべて世はこともなし……なのかもしれない。

とりあえず、ぼくは今日中に鎬京を旅立つことを決意したのであった。


   おわり






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