Act.4:古の護り手
「ふむ、ここがベネスか」
背後に現れた気配に、グラナーダが振り返る。
「誰だ?」
「……ただの冒険者じゃないようね」
「やる気か?」
互いに槍を構え、隙を伺う。
((この女――できる!))
10分近くも睨み合っていたが、ついにフェデルタが手を上げた。
「時間の無駄ね。提案があるのだけど」
どこからともなく取り出したソロバンを弾き始める。
「ほう。私にそちらにつけと?」
「報酬はこのくらい、別途働き次第でこのくらいボーナスが……」
「悪くは無い。だが私は金では動かん」
「分かってるわ。シナリオに乗じて、セクンダディを叩くいい機会じゃないかしら」
「ふむ。マスターを倒して、ついでに教主庁もつぶしておけば、カデンツァ様をマスターと教主を兼ねる立場に押せるな」
(そこまでは言っていないけど、まぁいいか)
「よし、乗ろう」
グラナーダとフェデルタが、がしっと握手する。
ここに、史上最強の敵が誕生した。
***
「何か、すさまじい寒気がする」
ふと、はるか彼方を振り返ってエレオスが身を震わせた。
「雪山通ってきたからね、風邪かな?」
「カデンツァ、あっためて……」
言葉が終わらないうちに、どこからともなく飛来した氷魔法が、エレオスを氷漬けにした。
あわてず騒がずフレイムアローで解凍するカデンツァ。
彼らはゾーリャ村に到着し、ヴェルトの案内で彼の家に向かっているところである。
「ところで、ヴェルトのかあちゃんは美人か?」
「んー、どうでしょう?
FF7のエアリスに似てるって言われてるみたいですけど」
「そりゃ是非、隊長と並べないと」
ヴェルトに続き、ジャディスとアドニスが家に足を踏み入れる。
その瞬間。
天井が落ちてきた。
「お、おい、これは一体……」
「忘れてた……母さん、留守の時はトラップ仕掛けてるんだっけ――」
「きゅう……」
侵入者を退治した天井は、するすると上がっていき、元に戻る。
「あら、お客様? それとも侵入者かしら?」
明るい笑顔の婦人が、あくまでにこやかに倒れた若者たちへ声をかけた。
「侵入者だったら、もっとご馳走しなくては」
手元には何かのスイッチ。
いつの間にか開いた壁には、ずらりと矢やら槍やらが並んでいる。
操作一つでこれらが降り注ぐらしい。
「もう腹いっぱいです」
ジャディスが丁重にお断りする。
「か、母さん……」
「まぁ、ヴェルト。ファルズフを首になって盗賊団に入ったの? ――私が成敗してあげます、母の情けと思いなさい!」
「母さん、誤解だから!」
男でも振り回すのが難しそうな大剣を首元につきつけられ、ヴェルトが悲鳴をあげる。
「ディアナ女史。話が進みませんので、からかうのはそのくらいで」
「あら、ごめんなさい」
ぽい、と放り投げられた大剣が、やっと起き上がりかけたアドニスの目の前に突き刺さり、再び気絶させた。
***
ゾーリャ山、頂上へと向かう雪洞。
先ほどから、わらわらとマルカートと呼ばれる人工生命体が隊員たちを襲っていた。
彼らの恐ろしさは、攻撃自体よりも、その姿と声にある。
見かけも声も、美しい女性なのだ。
また一人、ミラーズとフォルテによって、マルカートの兵士が倒れた。
男性隊員たちは、後ろに下がって、彼女らの活躍を見守っている。
「カデンツァはよく平気だな」
後方で固まった男性陣に紛れてはいるが、カデンツァは近づいてくるマルカート兵を確実に弓で倒している。
「ああぁん」
そのたびに近くであの声が聞こえるものだから、何人かは青くなるやら、赤くなるやら。
「あの断末魔……勘弁してくれ」
「別ジャンルのゲームで使えそうなあの声は反則だろ」
「顔や声で惑わされてどうするんだい。
ラスボスが超絶美形の女の子という可能性だってあるんだよ?」
「それはそうなんだが」
頭では理解していても、女性を手にかけるのはためらわれるというか。
あの声を聞くと、妙な気分になって落ち着かないというか。
「カデンツァさん。何か平静を保つコツってあるんですか?」
「うん。これはネットゲームで、
マルカートの中の人は小太りで汗っかきのおじさま、と考えればいいんだ」
カデンツァの言葉に、男性隊員が一斉に武器を構え、マルカロードを滅多打ちにした。(Sブレイク発動中)
***
雪洞を後にし、西の峰の火口へ。
そこには、泉に沈んだ大量の日拝石と、そのエネルギーを集めてエンハンブレへと送る巨人の姿があった。
ヴィオラがエネルギーの供給を止めようと邪魔をし、巨人はきょろきょろと当たりを見回す。
そして、第七の隊員たちで視線が止まった。
「目があったね」
「なんか様子がおかしいぞ」
「じーっと、誰かを見てるような」
「一体、誰を……」
巨人ギギリオンの視線を追って、皆の目が中心に集中する。
「――お、俺!?」
注目されて、ジャディスが仰天する。
「副長は……ガタイのいいお兄様に大人気なのですぅ」
「ここまできて、写真ネタを蒸し返すか!」
ずずうう……ん、と轟音を立てて、ギギリオンが広間に降り立った。
そして、他の隊員には目もくれず、ジャディスを追いかけていく。
真っ青な巨躯の中、頬だけがちょっと赤らんでいるのは気のせい……ではないらしい。
「なんでっ、俺がっ、こんな目にぃぃぃぃ……」
ずずん、ずずん、という足音と、副長の悲鳴が遠ざかっていく。
「――ジャディスの尊い犠牲に感謝しよう」
「あきらめ早っ!」
アドニスは、明日のわが身を見たような気がした。
しばらくして。
ジャディスがなんとかギギリオンを倒したらしく、アポクリファだけがふよふよと戻ってきた。
今まで通り、アドニスに吸い込まれる。
そこに、美少女&取り巻きが現れた。
「無事に回収できたようね。しっかり保管してちょうだい」
「どうして君が持とうとしないんだ!?」
「あとで分かるわ。……リングタワーで会いましょう」
またあっさりと背を向ける。
「ああ、そうだわ。エンハンブレの発進準備が整うまで、新入りさん、お願いね」
その言葉と同時に現れたのは、神殿騎士グラナーダ。
――出た!
一部隊員による、心の叫び。
「……」
「……」
「……」
無言のにらみ合いが続く。
――そして。
「それでは、本日はこれにて失礼いたします」
「うん、またね」
グラナーダが深々と頭を下げ、カデンツァもにこりと微笑み返す。
「戦わないのかよ!」
「私の役目は時間稼ぎだ。無駄な体力を使う気はない」
あくまで、徹底した合理主義。
先に行ったイデアたちと同様に空間転移で消えていった。
「あいつ、絶対正気だな」
「ああ、間違いねぇ」
一番グラナーダから殺意のこもった視線を浴びていたエレオスが呟き、いつの間にか戻ってきていたジャディスが深くうなずく。
「あのう、ところでぼくの見せ場は……」
「「「「そんなのあったっけ?」」」」
ヴェルトの肩を、アドニスがぽん、と叩いた。
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ピコーン♪ EXダンジョン ベネスの繭へいけるようになりました!
ヴェルトとアドニスの不幸合戦になってきました。
がんばれ男の子!
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?イデア←→アドニス?4