EXダンジョン ベネスの繭

「わー、でっかいキノコ」
第七の隊員たちは、辺境の地ベネスに来ている。
数歩先も見えないほどの重い霧。
「エレオス、大丈夫かい?」
「うう、一周目のトラウマが――」
気分の悪そうな友人を支えようと、カデンツァが手を伸ばす。
「あれっ? エレオス? どこだい?」
遥か上の方で、きょろきょろと探している気配。
――絶対に誰かがどこかで見てやがる。
突然足元に出来た穴に落ちたエレオスは、やり場の無い怒りに拳を震わせる。
「あんさんら、ここはやめときまへんか〜?」
ベネスに到着して以来、アドニスの背後で妙にびくびくしていたアンゲルスが言った。
「アンゲルスがそんなこと言うなんて珍しいですねぇ」
「なんかいやぁな予感がするんですわ」
もっとも、言われて止まるような第七中隊ではない。
スイッチがあれば押し、宝箱があればたとえミミックでもつついてみるのが冒険者というものだ。
そして、最下層へ。
そこには、アマティー遺跡にあったものとよく似た、巨大なソーマケイジが安置されていた。
アドニスが恐る恐る覗き込むと、それに反応したかのように、起動音が響いた。
――現れたのは。
「おおっ、下半身包帯の美少女!」
「む、見えそうで見えない……」
半分閉じたままの目が、彼らを見渡す。
ふわりと、半透明の彼女が袖を振り――。

ちゅどーん!

遺跡内に凝っていたソーマエネルギーが、そこかしこで連鎖爆発し始めた。
逃げ惑う隊員たちをうるさい邪魔者と判断したか、立て続けに凄まじい攻撃を繰り出す。
「ま、ままま、待ちなはれ! 姐さんが本気になったら話が終わってしまいますがな!」
アンゲルスの必死の叫びに、ようやく彼女は手を止め、辺りを見回した。
「む?」
ここがどこか、考えているようだ。
しばらくアンゲルスをじっと見た後、ぽん、と手を打った。
「おお、久しぶりだな。――どうした、そんなにボロボロになって」
「姐さんの低血圧、相変わらずでんなぁ」

――今のは暴走ではなくて、寝起きだったのか。

「ところでアンゲルス。お前は何をしている?」
かくかくしかじか、へこへこと頭を下げながら、アンゲルスが自分の1/10にも満たない大きさの少女に向かって説明する。
「ほう。面白そうだな。代われ
「ほえ?」
代われと言った」
「いいい、いやぁ、わいはアドニスはんのアンチソーマケイジですねん、こればっかは交代するわけには……」
言い返すアンゲルスに、美少女が投げる視線は冷たい。
「アンゲルス。お前の役目はなんだ?」
「はぁ、アドニスはんが暴走した時に、それを鎮めることでんなぁ」
――ここでそれをバラすか。
「この話のラストバトルはどうなっている?」
「原作では、アドニスはんにとりこまれたイデアはんが身を張って、アレーティアごと消してくれと頼むんですわ。ああ、涙なくては語れないとは、まさにこのこと……」
扇子を持ち、講談調で語り始めたアンゲルスに、オルフェウスが重々しくうなずく。
「そう。マスターケイジである二人が融合した状態であれば、それを打ち消すためのアンチマスターケイジは どちらでもいい ということだ」
「ぅいっ!?」
アンゲルスの手から、扇子がぽろりと落ちた。
「ほら、どけ」
「い、いや、しかし、それはっ……ぎぃいやぁぁぁ――」
押さえこまれたアンゲルスの姿が、ずぶずぶとアドニスの中に消える。
一体何が起こったのか。
怖くて誰も聞けない。
アドニスの背後を陣取ったオルフェウスが、表情一つ変えずに隊員たちを見回した。
「というわけだ。今後とも夜露死苦!」
「応! 夜露死苦な!」
すかさずミラーズが答えた。
どうやら意気投合したらしい。
「ソーマの女キャラって、どうしてこう……」
ジャディスのため息が深い。

こうして第七に頼もしい(?)仲間が加わり、ようやくアンゲルスに慣れ始めていたアドニスが、再び背後に怯える日々が始まった。





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本編ルートだけだと、オルフェウス様が出てこれないので、ベネスに寄ってみましたw
「(アンゲルスと対で)方言でブイブイ言ってほしい」とのことだったのですが、
もうひとひねりしてみたら、違う意味でブイブイ言ってるキャラになりました……。





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