Act.5:呪縛の円環

セクンダディ本部、マスターラバンの執務室に、すらりとした女性が現れた。
「マスターラバン。イデア殿から奪った鍵を返していただこう」
「む、教主庁のグラナーダか。それはともかく、ちと展開が早くないかね?」
警報も鳴っていなければ、警備兵の必死の抵抗もない。
「空間転移で、直接ここに来たのだから当然だ。……わざわざ正面突破するなど、時間の無駄というもの」
――誰かがどこかで大きなくしゃみをした。
「よくぞここまで来た。だが……うがっ!」
「返せ」
光の神聖魔法が直撃し、マスターラバンはアフロになった。
「いや待て、これではシナリオが……うぎゃっ!?」
「問答無用」
女王様のハイヒールが、マスターの頭に命中した。
「お、おぬしに、敬老という言葉は無いのか……」
「優先順位というものがあるのでな」
背景に、
カデンツァ>>>>(一時的に)イデア>ソナス教主>マスターラバン>その他
と大書されている。
「では、返していただく」
マスターの上にぽかりと浮いたアポクリファをあっさりと手にし、グラナーダは姿を消した。
「……どうしようかしら、コレ」
倒れて動かないマスターをつつきながら、イシュタルは悩む。
しばらくして、何か思いついたらしくぽんと手を打った。

***

リングタワーの頂上へと辿り着いた第七中隊を待ち構えていたのは、機械を取り込み、異形と化したマスターラバンであった。
「いかーん!」
「きゃあ!?」
光と炎の魔法に、フォルテが弾き飛ばされる。
「若い女子が、そのようなひらひらした服で走り回るなど、言語道断!」
「うわっ!?」
風と雷撃に、ミラーズもふっとばされた。
「お前も、そんな胸の見えそうな服など着ては、いかーん!」
「地元名物の頑固親父みたいだね」
面白そうに眺めていたカデンツァがそう評すると、矛先がそちらに向いた。
「いい年をした男が膝小僧を出しては、いかーん!」
「えっ、ぼくも?」
カデンツァが自分の足を見下ろしている間に、神聖魔法と火炎放射がマスターラバンに制裁を加え、それがトドメとなった。
(※見ていない間にやるのがコツ)
ぽて、と広間に落ちたのは、人間形のマスターラバン。
――巨大な顔だけ落ちてこなくてよかった。
隊員たちが、こっそり考えたのは内緒である。
「あれはそう、三年前のこと……。ベネスに調査へ行ったとき、繭で眠るイデアを見つけたのだ」
懐かしむように、ラバンが続ける。
「私はイデアが裸なのに驚いてな、思わず『若い娘がそのような格好をしてはいかーん!』と叫んでしまった」
いつの間にか、そばに来ていた当の美少女が、その後を引き取った。
「私は私で、マスターラバンの驚愕っぷりに感応してしまって。目の前にいた彼に、思わず持っていたアポクリファを突き刺しちゃったの」
――ああ、それは確かに、一撃で死んで、復活しそうだ。
「死んだのも生き返ったのも私のせいだから、無理やりアポクリファを取り返すのは忍びなくて、これまで待っていたのだけど」
「そこの娘……そのような格好を、しては、いかん――」
それだけ言うと、ラバンは動かなくなった。
どうやら、最後に見ていたのはオルフェウス。
マスターラバンの野望は、トルヴェールの風紀の乱れの阻止だったらしい。
なるほど、マスターに感応したというイデアは、ぴっちりと首まで覆った服を着ている。
「それでは、私のアポクリファを返してもらいましょう」
南無南無と手を合わせたイデアに、すっとグラナーダが光る鍵を差し出した。
「マスターラバンの分は、こちらに」
「まぁ、ありがとう。――あら、それじゃ、マスターラバンは、どうやってタワーに入って、どうして生きていたのかしら?」
彼女が首をかしげた時。
ラバンが、むくり、と起き上がった。
「痒……うま――」
「ぎゃーっ、Tウイルス!(バイオハザード)」
「噛まれた、噛まれた!」
「ワクチン! ワクチンは!?」
「イシュタルの仕業か……。オーディタールの隔離棟に閉じ込めておこう」
「そういえば、5が出たね」
「400万本だって?」
「販売出荷の8割が海外なんだって」
「へぇ〜×5」
また話があさっての方向へ行っている。
「……人間って雑念が多くて大変ね」
自分のアポクリファをふわりと取り込み、イデアが改めてアドニスを見た。
「さぁ、アドニス」
「は、はい?」
「預けておいたアポクリファを、私にちょうだい」
「ふぎゃっ!?」
アドニスに入っていたアポクリファが、親についていくカルガモのように行儀よく並んで現れた。
イデアが手を差し伸べると、彼女の中にふわりふわりと入っていく。
そして、そのすべてが彼女の中に消えた。
「ち、力が抜け――」
「ごめんなさいね、これからちょっと力が必要だから、貴方のもいただいたわ」
目を回して座り込んだアドニスが、力をふりしぼって尋ねた。
「イデア、一つ教えてくれ。どうして今までぼくにアポクリファを預けてたんだ?」
「自分のアポクリファがないまま他のを持つととても疲れるの
「そ、それだけ?」
「ええ。なんなら、今、他のを持ってみる?」
「遠慮しときます」
なんだか、力が抜けるだけでは済まないような気がする。
「それじゃ、リングを止めるわ」
イデアが宣言し、リングが逆回転した。

蛇口を、きゅっ、と閉めたように。

当然、ただ立っていた者たちは、遠心力でふっとばされた。
「あら、ごめんなさい」
逆側の壁にぶつかって、折り重なった人間たちに、イデアが謝る。
「さて、と。あとはアレーティアを呼ぶだけね。それでは、皆様、ごきげんよう」
「ばいばい、ぼうやたち」
「いざさらば」
「さいなら〜」
「失礼する」
イデア+4人が消えていくのを、普通に見送ってしまった。
「行っちゃったね」
「行ってしまったな」
「ビジター大発生は?」
「何も起こらないじゃないか」
「ソーマは増大中ですが、ビジター反応がどんどん消えていってますぅ」
このままでは、act5で大団円を迎えてしまいそうだ。
「隊長、どうします?」
「地上に被害がない以上、彼らを追う理由はなくなったわけだが……一応行ってみるか」
「浮遊大陸に遠足遠足!」
「バナナはおやつに入りますかぁ?」
「浮遊大陸って酸素薄いのかな」
「イデアさんと浜辺でデート……」
なにやら夢見がちな者も混じっているが、とりあえずもう一話は続くらしい。





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とうとうここまできました。あと一話w

女性陣はほとんど本編と変わっていないのに、なんでしょうね、この強さは……。

あと、バイオハザード5やりたいです。(こら)






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