四神伝 ―天化―10


「世話になったのう」
せっかく見栄えのよい姿だったのに、結局霊力が低下するとこちらの方が楽なのか、四神はミニサイズに戻ってしまっている。
「我々人間界に関わることですから」
慇懃に答えながら、大将は嫌そうな顔を隠さない。
「もう分裂なんかしないでくれよ」
「何か礼をしたいところなのだが、人間のことは我らの感覚ではよく分からんのだ。のう、皆の衆」
しばらく考えていた朱雀が、良いことを思いついたと言わんばかりに偉そうに翼を振った。
「火葬の際には骨まで綺麗に焼き尽くしてやろう」
「いらねぇ」
青龍が太公望にうなずいてみせる。
「そなたはすべての竜の一族に好かれるだろう」
「遠慮いたします」
きっぱりはっきり、太公望が断る。
寝ぼけた顔をしていた白虎が、ようやくぱちっと目を開いた。
「来世ではお主に力を貸してやろう」
「気の長い話だな」
ま、人間とは感覚が違いすぎる連中だ。
期待しないでちょうどいいだろう。
「さて、我らは霊気を回復するために、少し休みが必要なようじゃ。そなたの力で元の世界に送ってはくれぬか」
「ぼくが……ですか?」
「何、場所自体は我ら自身がよく知っておる。扉を開いてくれるだけでよい」
「分かりました」
四神たちに一礼をし、太公望が打神鞭を構えた。

「森羅万象の理において、すべてのものをあるべき場所へ。願わくば正しき流れの導きがあるように――封神!」

光の中に、四神たちが消えていく。
麒麟の石碑だけが失われた神泉苑は、何事もなかったかのように静けさを取り戻していた。



   ***

外は小春日和。
暖かい風が心地よい。
「天化」
名前を呼ばれて目が覚めた。
書類を見ているうちに、いつの間にかうたた寝していたようだ。


《選択》

   すぐに起きる

   寝たふりをする






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