四神伝 ―太公望―6
「世話になったのう」
せっかく見栄えのよい姿になっていたのに、霊力が低下するとこちらの方が楽なのか、四神はミニサイズに戻ってしまっている。
「我々人間界に関わることですから」
丁寧に答えたつもりだが、どうもこの姿を見るとぼくは機嫌が悪くなる。
そっけなく言い返してしまった。
「もう分裂なんかしないでくれよ」
やれやれ、といった感じで天化が肩をすくめる。
「何か礼をしたいところなのだが、人間のことは我らの感覚ではよく分からんのだ。のう、皆の衆」
しばらく考えていた朱雀が、良いことを思いついたと言わんばかりに偉そうに翼を振った。
「火葬の際には骨まで綺麗に焼き尽くしてやろう」
「いらねぇ」
天化が憮然として応える。
青龍がぼくにうなずいてみせる。
「そなたはすべての龍の一族に好かれるだろう」
「遠慮いたします」
きっぱりはっきり、断っておく。
こんなのに、まとわりつかれてたまるものか。
寝ぼけた顔をしていた白虎が、ようやくぱちっと目を開いた。
「来世ではお主に力を貸してやろう」
「気の長い話だな」
人間とは感覚が違いすぎる連中だ。
このまま約束なんて忘れ去ってくれるといい。
「さて、我らは霊気を回復するために、少し休みが必要なようじゃ。そなたの力で元の世界に送ってはくれぬか」
「ぼくが……ですか?」
「何、場所自体は我ら自身がよく知っておる。扉を開いてくれるだけでよい」
「分かりました」
四神たちに一礼をし、ぼくは打神鞭を構えた。
「森羅万象の理において、すべてのものをあるべき場所へ。願わくば正しき流れの導きがあるように……――封神!」
光の中に、四神たちが消えていく。
麒麟の石碑だけが失われた神泉苑は、何事もなかったかのように静けさを取り戻していた。
***
あれから数日後。
ぼくは武王殿に報告がてら、鎬京に来ていた。
王宮の雰囲気は堅苦しいので、黄家に泊まらせてもらっている。
いつまでも世話になっているわけにもいかないし……そろそろ修行の旅に戻るか。
《選択肢》
庭に行く
厨房に行く
直接天化の部屋に行く
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